日本とオーストラリアでは、住まい方に対する考えや地域との関わり方に大きな違いがあります。ここでは、持ち家志向や住宅ローン制度、ご近所とのつながり方などを比較し、それぞれのライフスタイルの特徴と価値観を探っていきます。

持ち家志向と賃貸の価値観
住まいを「所有するか、借りるか」は、多くの人にとって大きな人生の選択です。日本では持ち家に価値を置く傾向が強く、一生に一度の買い物として慎重に選ぶ文化があります。一方、オーストラリアではライフステージに応じて住まいを柔軟に変える考え方が一般的で、賃貸にもポジティブなイメージが根付いています。
日本では「持ち家=人生の成功」という意識が根強い

日本では、「家を持つこと」は人生の節目とされています。特に結婚や子どもの誕生をきっかけに住宅購入を考える人が多い傾向にあります。マイホームは資産としての意味合いがあります。それだけでなく、安定や社会的ステータスの象徴ともされています。そのため、家族で長く住み続ける前提で慎重に選ばれるケースが多く見られます。
オーストラリアは無理をせず柔軟に住まいを変える文化
一方、オーストラリアでは「持ち家=絶対的な成功」という考えは薄いです。ライフスタイルや家族構成の変化に応じて柔軟に住まいを変える文化が根付いています。賃貸でも戸建て住宅に住めることが多く、家の購入にこだわりません。自分に合った環境で快適に暮らすことを重視する人が多いのが特徴です。
住宅ローンと不動産価格の違い
家を購入する際には、価格やローン制度も重要なポイントです。日本とオーストラリアでは不動産市場の動きやローンの組み方にも違いがあります。それが、家に対するリスク感覚や将来設計にも影響を与えています。制度の違いから見える、住まいへの向き合い方の違いを探ってみましょう。
オーストラリアは不動産価格が高く、変動金利が主流
オーストラリアの不動産価格は高騰傾向にあります。特にシドニーやメルボルンなどの都市部では1億円を超える物件も珍しくありません。住宅ローンは変動金利が主流です。中央銀行の政策金利によって返済額が変わるため、ローン契約後も金利の動向に敏感になる必要があります。
日本は超低金利と長期ローンで購入を後押し
一方、日本では超低金利が長く続いており、固定金利・変動金利を選べる制度が整っています。ローンの返済期間も35年が一般的です。そのため、月々の返済額を抑えて住宅を購入しやすい環境が整っています。こうした制度は、持ち家志向の強さを後押ししている一因でもあります。
引っ越し頻度と住まいの流動性
住まいは「固定資産」として長く暮らす場と捉えるか、それとも「ライフスタイルに応じて変えるもの」と考えるかで、暮らしのスタイルは大きく変わります。日本では転居は一大事です。しかし、オーストラリアでは家族構成や仕事に合わせて引っ越しを繰り返すことも珍しくありません。
日本では一度購入した家に長く住む傾向

日本では、一度購入した家に何十年も住み続けるのが一般的です。転職や転校のハードルも高く、引っ越しは大きな決断を伴います。そのため「人生の節目」として扱われます。家を買う際には将来の家族構成や老後の生活も見据えて、慎重に選ぶ傾向があります。
オーストラリアではライフスタイルに合わせて柔軟に住まいを変える
オーストラリアでは、転職や子どもの成長などのライフイベントに合わせて、気軽に住まいを変えるスタイルが主流です。家具付き賃貸や、トレーラーハウスなど移動しやすい住宅も普及しています。「家=資産」よりも「家=生活の器」として捉える文化が浸透しています。
住まいと地域社会との関わり方
家は建物そのものだけでなく、地域社会とのつながりも含めて“暮らしの拠点”となります。日本とオーストラリアでは、ご近所付き合いや地域コミュニティとの関わり方にも違いが見られます。住む場所をどう選び、どうつながっていくか――その姿勢に、社会との距離感が現れています。
日本は挨拶程度の距離感が一般的
日本では、ご近所付き合いが徐々に希薄化してきています。「顔を合わせたら挨拶をする」程度の関係が一般的になっています。防犯や災害時の助け合いは大切とされます。一方で、深く干渉しない距離感を保つことが「現代的なマナー」として受け入れられている地域も多くあります。
オーストラリアでは庭先での交流が活発
オーストラリアでは、週末になると庭や玄関先でバーベキューやティータイムを楽しみます。そこで自然な形でご近所同士の交流が生まれています。訪問を歓迎する文化があり、見知らぬ人でも気軽に話しかける雰囲気があります。住まいの開放性が、人との距離感にも影響を与えているようです。
ペットとの暮らしと住宅環境
ペットと暮らすスタイルは、住宅の広さや環境に大きく左右されます。オーストラリアでは庭付き住宅が多く、ペットとの共生が自然に根付いています。しかし、日本では都市部を中心に制約も多く見られます。ペットと過ごす暮らし方の違いは、住宅選びや日常の風景にも影響を与えています。
オーストラリアはペット可物件が多く、共生しやすい

オーストラリアではペットとの共生が文化として定着しています。そのため、賃貸物件でもペット可の選択肢が多くあります。特に犬を飼う家庭では、広い庭付きの家を選びます。そして、ペットと自然の中で伸び伸びと暮らすスタイルが根付いています。ドッグパークや獣医施設も充実しており、ペットを家族の一員として迎える意識が強いです。
日本では制限が多く、工夫が必要な暮らし

日本では、ペット可の物件は少ないのが現状です。鳴き声やにおいによる近隣トラブルへの懸念もあり、飼育には制限が多くみられます。庭付き物件も限られており、ペットと快適に暮らすためには、工夫や調整が求められます。特に都市部では、ペット可物件の競争率が高く、選択肢も限られる傾向があります。
まとめ
住まいに対する考え方や地域との関わり方は、その国の文化やライフスタイルを映し出す鏡のようなものです。日本では安定や機能性を重視した住まいが好まれ、持ち家志向が根強く残る一方で、オーストラリアでは柔軟性や心地よさが大切にされています。両国の違いを知ることで、自分に合った暮らし方を見つけるヒントになるかもしれません。
コメント