日本とオーストラリアでは、学校教育の中でお金の教育に関する取り組みに大きな違いがあります。日常的なお金の知識は、将来の自立や安定した生活にも直結する重要なスキルです。しかし、日本ではマネーリテラシー教育が十分に根付いているとは言えません。一方、オーストラリアでは国のカリキュラムやIB(国際バカロレア)などを通じて、子どもたちが早い段階から金融知識を身につける機会が用意されています。ここでは、両国のお金の教育の違いとその背景、子どもたちに与える影響について考えていきます。

マネーリテラシーとは?教育におけるその重要性
お金の知識やスキルを意味する「マネーリテラシー」は、日々の生活だけでなく、将来設計やキャリアにも深く関わります。子どもたちが小さいうちから「お金=生活の道具」として正しく学ぶことは、健全な金銭感覚を育む第一歩です。特にデジタル決済やサブスクリプションサービスが普及する現代において、若年層が適切なお金の使い方を知らないまま大人になるリスクは無視できません。教育現場での役割がますます重視されつつある分野です。
マネーリテラシーの定義と目的

マネーリテラシーとは、「お金に関する知識・理解・判断力を持ち、適切に管理・活用できる力」のことです。収入と支出のバランスをとる家計管理から、投資や保険、税金、ローンの仕組みまで、その範囲は非常に広く、生涯を通じて必要とされるスキルだと言えます。
これらの知識を持つことで、無理のない生活設計ができ、金融トラブルを避けやすくなります。
将来の生活設計に与える影響

マネーリテラシーがあることで、将来の生活設計も計画的に進めやすくなります。人生のあらゆる場面で、お金の判断は欠かせません。知識がないまま社会に出れば、予期せぬトラブルに巻き込まれるリスクが高まります。しかし、早い段階から教育があれば、安心して選択を重ねることができます。
日本の学校教育におけるお金の教育の実態
日本では、マネーリテラシー教育は断片的にしか行われていません。系統だったカリキュラムが存在しないのが現状です。また「お金=大人のもの」「話題にするのは、はしたない」といった文化的背景もあります。それが教育現場での扱いを難しくしています。また、子どもたちは実生活でお金に触れる機会が多くありません。そのため、クレジットカードやローン、税金といった重要なお金の教育を受けないまま社会に出ていくことも多いのです。
カリキュラムの現状と課題
日本では、マネーリテラシー教育は家庭科や総合学習の時間に少し触れる程度です。そのため、系統的なカリキュラムは存在していません。背景には「お金の話は、はしたない。」という文化的な価値観が根強く残っていることも挙げられます。
この考え方は、江戸時代の武士道や儒教の影響を受けた「お金を追い求めることは卑しい。」という美意識や、戦後の平等主義に基づく「目立たないことが美徳。」といった教育方針からきています。家庭内でも、「お金のことは親が考えるもの。」「子どもが話題にすべきでない。」とされる傾向があります。その結果、学校でもお金を教育のテーマにすること自体が敬遠されがちなのです。
社会に出たときのギャップ

お金についての知識が不十分なまま大人になると、トラブルに巻き込まれることが少なくありません。
お金の知識が不足していると、若者は「奨学金の返済計画を立てない」「サブスクや分割払いのリスクを理解しない」「税金や年金の義務を軽視する」といった落とし穴に陥りやすくなります。また、詐欺まがいの投資やマルチ商法の勧誘にひっかかる例も多く、マネーリテラシーの低さはトラブルの温床ともなっているのです。
このように、日本の若者は、お金の教育受ける機会が乏しいまま社会に出てしまいます。そのため、金融面での自立が難しくなるケースが多いのが実情です。
オーストラリアにおける金融教育の取り組み
オーストラリアでは、小学校から高校まで、段階的にマネーリテラシーを学ぶカリキュラムが整備されています。全国の教育課程には「消費者と金融」という項目が明確に盛り込まれています。子どもたちは日常生活や職業選択に関わるお金の知識を実践的に学んでいます。また、一部の学校ではIB(国際バカロレア)制度が導入されており、探究型学習の中で「経済」「持続可能な社会」「価値観」などのテーマとお金を結びつけながら学ぶことが可能です。
全国カリキュラムに組み込まれたマネー教育

オーストラリアでは、全国共通の教育課程に「消費者と金融(Consumer and Financial Literacy)」が明確に盛り込まれています。小学校から高校まで段階的に、お金の価値や使い方を実生活に即して学ぶことができます。たとえば、小学生が仮想通貨での買い物体験をしたり、商品の比較や広告分析を行います。このような実践的なアプローチが特徴です。
IB制度に見る探究的な金融学習
また、IB(国際バカロレア)を導入している一部の学校では、探究型学習の中で「経済」「倫理」「持続可能性」といったテーマとお金を結びつけながら学ぶことが可能です。これは単なる知識の習得ではなく、「お金の価値」や「社会における役割」を深く考えさせる教育スタイルです。
日豪の違いが生む子どもの金銭感覚と将来意識
教育制度の違いは、子どもたちのお金に対する意識や態度に明確に表れます。日本では「貯金」や「節約」が重視されがちです。しかし、オーストラリアでは「お金をどう活用するか」に焦点が当たります。株式投資や副業についても早期から触れていきます。マネー教育の有無が、成人後の経済的な自立度や金融トラブルへの耐性にも直結しています。
お金との付き合い方に現れる文化の差

日本の子どもたちは、節約や貯金に重きを置きがちです。投資=リスクと考える傾向があります。
一方、オーストラリアの子どもたちは、主体的にお金と向き合っています。そのため「お金をどう使い、どう増やすか」という視点を自然に持っています。
将来設計とチャレンジ精神への影響

オーストラリアでは、副業や起業の意識が若いうちから育まれます。教育の段階で「自分で稼ぐ力」を身につけるため、将来的な自立心やチャレンジ精神が強くなる傾向があります。この違いは、職業選択やライフスタイルの柔軟性にもつながっていきます。
まとめ|今後の日本のマネー教育への期待
マネーリテラシーは、もはや一部の人だけに必要な知識ではありません。すべての子どもに平等に与えられるべき教育です。子どもに必要な「生きる力」と言っても過言ではありません。
オーストラリアやIBのように、日常や社会とのつながりを意識した実践的な学びを、日本の教育にも取り入れる必要があります。
「将来困らないために」ではなく、「今をより良く生きるために」マネー教育を行う。そんな発想の転換が、日本の教育現場にも求められています。
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