日本とオーストラリアの医療制度の違い:GP制度と国民皆保険を徹底比較

GPから医療制度の話を聞く患者。

私たちはいつどこで体調を崩すかわかりません。だからこそ自分が訪れる国の医療制度の違いを知っておくと、もしもの時に心の保険になるでしょう。特にオーストラリアは、日本とは大きく異なる仕組みを採用しているので、戸惑うことも少なくありません。ここでは、オーストラリアのGP制度(かかりつけ医制度)や、予防医療を重視する文化、日本の「すぐに病院へ行く」医療慣習との違いを中心に、両国の医療制度を比較します。

目次

オーストラリアの医療制度の特徴

オーストラリアの医療制度は、日本とは大きく異なる仕組みが特徴です。特にGP(かかりつけ医)制度や、Medicare(メディケア)と呼ばれる公的保険制度など、医療にアクセスするまでの流れや考え方に違いがあります。

GP(General Practitioner)制度とは?

かかりつけ医に健康について相談している若い男女のカップル。

オーストラリアの医療制度で特徴的なのが、GP(General Practitioner)制度と呼ばれる制度です。日本語では「かかりつけ医」「総合診療医」「家庭医」と訳されます。1984年に公的医療保険Medicareが導入されたことをきっかけに、医療の最初の窓口として確立された制度です。日本のように、いきなり病院の専門医を受診しません。まずは地域のGPを受診し、必要に応じて専門医に紹介されます。


GPは、内科、小児科、皮膚科など幅広い分野の知識を持ち、患者の健康を総合的に管理します。風邪やけがはもちろん、メンタルヘルスの相談、健康診断、予防接種などもGPが対応します。基本的に、専門医にかかるにはGPからの紹介状が必要です。これは医療費の無駄を防ぎ、効率的な医療提供を目指すための仕組みです。日本のように「気になるからとりあえず耳鼻科に行く」という感覚とは大きく異なります。
また、基本は予約制です。そのため、当日や翌日に診てもらえるとは限りません。日本人にとって「すぐ診てもらえないの!?」というカルチャーショックを感じやすいポイントかもしれません。

医療費とメディケア制度の概要

プライベートの医療保険の契約書と聴診器と注射器。

オーストラリアには、Medicare(メディケア)という公的医療保険制度があります。GPの診察費や一部の検査・治療費が無料または一部負担になる制度です。これは、永住者や市民が利用できます。
例えば、メディケア対応のGPであればBulk billing(バルク・ビリング)と呼ばれる制度を利用することで、患者の自己負担ゼロで診察を受けることが可能です。ただし、都市部や人気のあるGPでは、バルクビリングに対応していないクリニックもあります。


一方で、メディケアではカバーされない医療サービスも多く存在します。例えば、歯科治療や眼科、私立病院での治療などです。そのため、オーストラリア国民の40%強が何らかの民間の医療保険(プライベート保険)にも加入しています。
また、救急車の利用も州によっては有料です。こうした点も日本人には驚きかもしれません。

救急医療の違いについては、こちらで詳しく解説しています。

参考 オーストラリアの社会保障制度:厚生労働省「世界の厚生労働2007」

日本の医療制度の特徴

日本の医療制度の特徴は、世界的にも高水準な医療を比較的安価で受けられる点です。また、国民皆保険制度により、保険証を使って誰もが医療を受けられる環境が整っています。
医療機関や専門医に直接アクセスできる自由度の高さも日本ならではの魅力です。

自由に病院を選べる日本のシステム

紹介状がなくても柔軟に医療を受けられる大きな総合病院。

日本では、患者が自由に医療機関を選べるシステムです。内科、整形外科、耳鼻科、皮膚科など、症状に合わせて自分の判断で直接専門医にかかることが可能です。
紹介状がなくても大きな総合病院や大学病院を受診できます。そのため、「ちょっと不安だから大きな病院へ行く。」といった選択肢が取りやすいのが特徴です。
この柔軟な医療へのアクセスは、日本に住んでいると当たり前のように感じます。しかし、オーストラリアのようにまずGPにかかるシステムを知ると、日本の医療制度は医療機関と繋がることができる便利なシステムだと気づかされます。

国民皆保険制度と費用感

日本では、国民皆保険制度が導入されており、ほぼすべての人が健康保険に加入しています。保険証を提示することで、病院での診察や治療にかかる費用の自己負担が原則3割になります。収入や年齢に応じた負担軽減制度もあります。
通院だけでなく、入院・手術・薬の費用にも保険が適用されます。そのため、比較的安価で質の高い医療を受けられることが大きなメリットです。
その反面、気軽に病院を利用できるため、ちょっとした不調でもすぐ病院に行くという文化が根づいているとも言えます。これは、予防よりも症状が出てから対処するという考えが主流になりやすい背景にもつながっています。

まとめ:制度の違いは文化の違い

オーストラリアと日本の医療制度は、仕組みも考え方も大きく異なります。オーストラリアではGP制度やMedicareによって、効率的かつ予防重視の医療が整備されています。そして、患者自身が健康管理の主体となる文化が根づいています。一方、日本では専門医へのアクセスが自由。誰もが平等に医療を受けられる国民皆保険制度が支えとなり、安心感を与えています。

どちらの制度にも長所と短所があり、それぞれの国の価値観や生活スタイルが色濃く反映されています。海外で暮らす、あるいは旅行をする際には、こうした医療制度の違いを理解しておくことが、安心につながります。「もしも」のときに慌てず対応するためにも、制度の違いを知っておくことは、まさに心のセーフティネットとなるでしょう。

日本とオーストラリアの健康観の違いはこちらで詳しく解説しています。

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この記事を書いた人

日本とオーストラリア、二つの国に縁を持つWebデザイナー兼ライター。
介護業界で約14年間、現場業務や事業所運営に携わった経験を持つ。

現在はオーストラリア人のパートナーとともに、多文化な価値観に触れる日々を送りながら、三人のティーンエイジャーの母としても奮闘中。

このブログ「Two Country Life」では、日本とオーストラリアを行き来しながら、二つの国の暮らしや文化の違いを実体験をもとに発信しています。異文化理解の架け橋となることを目指しています。

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