突然の体調不良や事故。そんな「もしも」のとき、命を守るために欠かせないのが救急医療です。しかし、日本とオーストラリアではその仕組みや考え方に大きな違いがあります。ここでは、日本での私の実体験も交えながら、両国の救急医療制度や文化の違いを比較します。
救急車の呼び方と費用の違い
日本とオーストラリアでは「救急車を呼ぶ」という行動自体の意味合いが異なります。それは、制度や費用の違いが背景にあります。
日本の救急車は「無料で誰でもすぐに呼べる」

日本では、消防救急「119」に電話します。24時間いつでも救急車が出動します。費用は原則無料です。これは国民皆保険制度の一環で、税金によって支えられています。無料であるがために、軽症でも気軽に呼ぶ人もいます。昨今では、タクシー代わりのように使われている事案もあり、社会問題として取り上げられています。アドバイスが受けられる電話相談サービスを開設している自治体もありますが、利用がまだ浸透していないのが実情です。
オーストラリアの救急車は「有料が当たり前」
オーストラリアでは、緊急電話番号「000」に電話します。消防・警察・救急の共通窓口になっています。オーストラリアでは救急車は基本的に有料です。費用は州によって異なりますが、数万円から数十万円かかることもあり、救急医療の全てをカバーする保険に加入していないと高額請求を受ける可能性があります。そのため、多くの人が「本当に必要か?」と慎重に判断してから呼びます。判断に迷う時には、州ごとに提供している情報提供サービスを受けることができます。たとえば、電話やビデオ通話での相談、緊急医療クリニックの紹介などが、24時間365日提供されています。
病院搬送後の対応の違い
救急車で病院に着いた後の対応も、両国では大きく異なります。特に緊急度の判断や待ち時間に差が見られます。
日本は即診察と検査がスムーズ

日本の救急外来では、比較的迅速に医師の診察が受けられます。検査機器の充実度も高く、必要に応じてCTやMRIなどの精密検査がすぐに行われるケースもあります。初期対応がスピーディーで、安心感があるのが特徴です。
オーストラリアは「トリアージ重視」
オーストラリアでは、救急外来に到着するとまず「トリアージ」と呼ばれる緊急度の評価を受けます。これは看護師が患者の状態を見て優先順位を決める仕組みです。軽症の場合、数時間待たされることも珍しくありません。また、検査や治療はかかりつけ医(GP)を通じて段階的に行われることが一般的です。
救急医療を取り巻く文化と意識の違い
医療制度の違いは、国民の意識や行動にも大きな影響を与えています。「何をもって緊急とするか」の感覚も異なります。
日本は「とりあえず病院へ」の安心文化
日本では、「体調が悪ければすぐに病院へ」という意識が強くあります。救急車も「念のため」として呼ばれることもあります。背景には「医療は公共サービス」という考え方があり、アクセスのしやすさが安心感につながっています。
オーストラリアは「まず自己判断・GPへ」
対してオーストラリアでは、軽度の症状で救急を利用することはほとんどありません。まずは自己判断で様子を見るか、GP(かかりつけ医)に相談するのが一般的です。医療リソースを適切に使うという自己責任の文化が根付いています。
実体験から学んだ日本の救急体制の現状

実際に日本で救急車を利用した経験は、制度のありがたみと同時に、今後の課題も感じさせるものでした。
私は日本で祝日の夜に、家族の体調が急変したことがありました。救急車を呼ぶレベルか判断がつかなかったので、まずはその日の救急輪番病院に電話をし、相談しました。症状を伝えると「救急車を呼んでください」との指示があり、そのとおりに119へ連絡。救急隊員に経緯を説明すると、病院との連携もスムーズで、相談した輪番病院が受け入れ病院となってくれ、時間を取られることなく搬送されました。
このとき、「日本の救急体制は本当に安心できる」と実感しました。一方で、「無料だからこそ、軽症でも呼ぶ人が後を絶たない」と聞き、将来的にオーストラリアのように有料化される日が来るのではないかと感じました。
まとめ:救急医療は制度だけでなく意識も違う
日本とオーストラリアでは、救急医療の制度も文化も大きく異なります。どちらにも利点と課題があります。どの国でも共通して大切なのは「正しく制度を理解し、適切に使うこと」。いざという時に備え、救急医療に対する意識を高めておくことが、命を守る第一歩になるでしょう。
